滲出性中耳炎

6歳までに90%の子供が1度はかかると言われるよくある病気です。難聴がほとんどない軽症もありますが、中等度難聴になったり、手術が必要になったりすることもあります。
60歳以上の方にも耳管機能障害によって起こる滲出性中耳炎が比較的多く見られます。

原因

子どもの滲出性中耳炎の半分以上が、急性中耳炎が治りきらずに中耳に滲出液が貯まることで起こります。特に2歳までの滲出性中耳炎の多くは急性中耳炎に続いて起こります。
耳管機能障害があると、中耳が陰圧化し、中耳の貯留液が排出されにくくなります。口蓋裂がある場合や鼻すすり癖がある場合には耳管機能障害になりやすく、滲出性中耳炎がおこりやすく、治りにくくなります。
又、耳管の出口である鼻の奥や上咽頭に病変があると、滲出性中耳炎を発症しやすくなり治りにくくなります。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド肥大がある場合がこれに相当します。
成人で滲出性中耳炎がある場合、上咽頭癌が原因ということもあるので、注意が必要です。

症状

主な症状は難聴と耳閉塞感です。痛みや発熱がなく、難聴も高度でない為、小児では気づかれずに長期間見過ごされることもあります。
長期に未治療の状態が続くと、難聴による言語発達の遅れが懸念されます。特に5歳以下の子には注意が必要です。また、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎など重症で手術の必要な中耳炎へ移行することもあります。

鼓膜の状況

滲出性中耳炎 鼓膜の状況

検査

鼓膜の所見をしっかり観察するほかにティンパノメトリーで鼓膜の可動性を見ます。5歳以上の子にはオージオグラム(聴力検査)で難聴の程度を調べます。また、長期間治っていない場合にはレントゲンで側頭骨の乳突蜂巣の発育を調べます。乳突蜂巣の発育が悪い場合、滲出性中耳炎の治りが悪くなると言われています。
小児の滲出性中耳炎に、副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・アデノイド肥大が合併することが多く見られます。副鼻腔炎やアデノイド肥大に対してはファイバースコープやレントゲンを使って診断します。アレルギー性鼻炎に対しては鼻汁検査や血液検査をします。

治療

発症から3カ月は鼓膜切開やチューブ留置をせずに薬で経過をみるのが原則です。当院では通院せずにオトベントやイヤーポッパーという自己通気療法も勧めています。これは自宅でできるメリットがあります。6歳ころから可能です。
又、診察室では他の器具を使って耳管から空気を中耳に送り込む治療(通気療法)も行なっています。薬は粘膜の炎症を改善するためにカルボシステイン(ムコダイン)を使用します。カルボシステインは効きはマイルドですが、副作用は極めて少なく、小児滲出性中耳炎に推奨される薬です。
副鼻腔炎のある場合は抗生物質を服用します。

長引く副鼻腔炎に対してはクラリスロマイシンを半量で1カ月以上服用します。ネブライザー治療も有効です。アレルギー性鼻炎のある場合はアレルギー性鼻炎に対する内服薬や点鼻薬を使います。
アデノイド肥大症のある場合は点鼻ステロイド薬を使ったり、アデノイド切除術をすることもあります。
最初の3カ月で治癒しない場合は、その後も自然に治癒しない可能性が高くなります。このケースでは鼓膜切開鼓膜チューブ留置を考慮することになります。
積極的に鼓膜チューブ留置をすべきケースを挙げると次の2つになります。

  1. 両側滲出性中耳炎で両側とも中等度以上(40dB以上)の難聴のある場合
  2. 片側であっても鼓膜の高度な陥凹や接着(アテレクタシス)や癒着が見られる場合(下図)
    滲出性中耳炎 接着・癒着

長く滲出性中耳炎にかかっていて、乳突蜂巣の発育が不良の場合、6歳を過ぎると治りが悪くなることが予想されます。このような場合、上記の①②以外でも25dB以上の難聴があればチューブ留置を考慮することになります。

滲出性中耳炎 チューブ留置

ただ、チューブ留置(右図)にもリスク(弊害)があります。鼓膜の石灰化、硬化や永久穿孔そしてチューブの鼓室内脱落などです。永久穿孔は長期留置型で約15%、短期留置型で約2%起こるとされています。

注意

  • 滲出性中耳炎は治癒までに3カ月以上かかることも多く、定期的な通院が必要です。症状が無くても、根気よく通院しましょう。
  • 鼻すすり癖は滲出性中耳炎にとって良くありません。止めるようにしましょう。
  • 鼓膜チューブ留置をしても、鼓膜のトラブルが起こることがあります。月に1回は通院しましょう。
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